ひだまりHoney
「でも嫌ではないだろう? 好きな物なんでも買ってあげるよ。何が欲しい?」
逃げなくてはという気持ちが段々と強くなる。
この場から離れるべく、係長の横をすり抜け給湯室から出ようとした。
けれど戸口をくぐり抜けるよりも早く、骨張った手が私の腕を掴み上げた。
「きゃっ!」
「逃げないで、珠洲」
「ぎゃぁぁっ!」
後ろから抱きつかれ、耳元で係長が私の名前を囁く。
「離してくださいっ!」
「僕の女になると約束してくれれば、離してあげるよ」
抵抗すればするほど、係長の押さえ込む力が強まっていく。
衣擦れする音と、靴底の擦れる音。
持っていたトレーが床に落ち、廊下へと転がっていった。