ひだまりHoney

思ったことがぽろりと口からこぼれ落ちてしまった。

しまったと思った瞬間、紺野さんが肩越しに私を見た。

気まずい視線が交差する。口を慌てて指先で抑えた。

紺野さんの腕が、私の首に伸びてくる。

「珠洲だって、妊娠したとか変なメール送ってくるなよ! 焦るだろ!」
「ご、ごめんなさいっ。送信ボタン、間違って押しちゃったんです」

後ろから抱きかかえられるように、彼の両腕の重みが肩にのし掛かれば、体に染みついている恐怖感が、当たり前のように私の中に顔を出す。

だけどそれは、ほんの一瞬でなりを潜めていく。

背中にあたる紺野さんの温度が、すぐに私の核に到達し恐怖を解きほぐすのだ。

「す、珠洲さん……妊娠されたんですか?」
「い、いえ。してません」
「……そうですか。驚きました……デートの次の日には必ず、今回も体の関係はなかったんだと、寂しげな報告を聞いていたものですから」

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