ひだまりHoney
助手席にいる美都里さんの輝く笑顔にホッとしつつ、私は手を振った。
「帰ろう、珠洲」
微かにため息を吐いてから、紺野さんはゆっくりと歩き出した。
「……あれ?」
数メートル先で、今動き出したばかりの車がハザードを光らせて路肩に停車した。
しかし、大田原さんも美都里さんも降りてくる様子はない。
立ち止まり、黙ってそれを眺めていると、紺野さんにメールの着信が入る。
用を果たしたかのように短くクラクションを鳴らし、大田原さんの車は再び動き出した。
「……あぁ。そう」
「紺野さん、どうかしましたか?」
「……のろけメールだよ。さ、帰ろう」
「はい」
スマホの画面を見つめながら、紺野さんは再び駅に向かって歩き出す。
並んで歩けば、途端に緊張感が込み上げてきた。
久しぶりの紺野さんだ。