ひだまりHoney
幸せを積み重ねよう。
バスタオルで髪の毛を拭きながら脱衣所を出て、廊下を歩く。
リビングに繋がるドアノブに手を掛け……私はそのまま動きを止めた。
テレビの音と、それに混じって紺野さんの小さな笑い声が聞こえてくる。
当たり前だけど、この向こうには紺野さんがいる。
緊張が高まっていくのを感じながら、私は瞳を閉じた。
帰りがけに寄った大型スーパーマーケットで色々と買い込んだ後、私は初めて紺野さんの家に足を踏み入れた。
落ち着かない手元で夕食を作れば、紺野さんはそれらをもぐもぐと平らげてくれた。
「旨いよ」っていう言葉をくれ、言葉通りの表情を浮かべてくれる彼とテーブルを挟み、曖昧な笑みを浮かべながら、私は機械的に箸を進めた。
緊張感が続く中の食事で、味が良く分からなかったのだ。
結局、食べきる事が出来ずに残してしまった。