ひだまりHoney
紺野さんに抱かれるという現実が、目の前まで迫ってきている。
「痛み」と「苦痛」しかない過去の記憶が、私を試すように頭の中でちらつき始める。
明かりの調節を終えた紺野さんが、スタンド脇の棚の上に置かれていた長方形の箱を手に取った。
多分……電車の中で話していたあの箱だ。
ゆっくりと振り返った彼から視線を反らし、慌てて掛け布団を引っ張った。
胸元を隠し、身を縮めれば、彼の声が小さく響いた。
「恐い? ちょっと表情が強ばってる」
目を向ければ、仄かなオレンジの明るさの中で、紺野さんは戸惑ったような表情を浮かべていた。
「……ちょっとだけ……でも」
乗り越えなくちゃいけない。これからの二人のためにも。
「こっちに、来て下さい」
片手で胸元を抑えたまま、もう片方の手を紺野さんへ伸ばす。
「……紺野さんの温もりを、私に下さい」