ひだまりHoney
ちょっとだけ距離が近付いた事に、思わず息を止める。
でも息苦しさを感じる前に、彼の足は後退していった。
意図してなのか、無意識になのか、程よい距離を取ってくれたのだ。
無駄に入っていた肩の力が、徐々に抜けていく。
すぐに上の階へ到着し、小さな箱から飛び出すように、私は足を踏み出した。
「あのさ」
エレベーターの扉の閉まる音と共に、ちょっとだけ固い彼の声が、私を追いかけてきた。
「会社内でも、嫌な思いをさせちゃって、本当に申し訳なかった。今度の総合ミーティングで厳しく言っておくから」
振り返れば、彼は今朝と同じ表情を浮かべていた。
抱いていたあやふやな気持ちが、強い確信へと変わっていく。