ひだまりHoney

あのフロアにいる人たちは、みんながみんなを「さん付け」で呼んでいるし、紺野さんのネームホルダーには顔写真と名前しか載ってなかった。そしてあの二人の名刺を私は見せてもらったこともない。

だからはっきりとした役職は分からないけれど……私の勝手なイメージでは、大田原さんが部長で紺野さんが副部長な感じだ。

美都里さんに聞けば、きっときっちり把握していて、楽しげに教えてくれるだろう……けれど正直、私にとってそこはどうでも良いことだ。

上田係長より偉い人を盾にして、あの気持ちの悪い手から逃れる事が出来れば、それでいい。充分なのである。

周りの人の流れよりも、幾分のんびりとした足取りで、私は改札を抜けていく。

向かう先はもちろん会社ではない。二十四時間営業しているファストフード店だ。

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