丹後の国の天の川。
 そのころ、朝廷では、大変な騒ぎが持ち上がっていた。
 温羅(うら)の一族の末裔である島子を処刑することに決まったのである。
 吉備津彦はこれに異論をとなえたが、ムダなあがきだった。
「吉備津彦殿は筒川の島子と交流があるさかいになぁ。残念やけど、あきらめはったほうが、ええやないかえ」
 いやみな貴族に蔑みごとを言われ、吉備津彦は拳をにぎり、唇を真一文字に結んでいた。
 
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