丹後の国の天の川。
「吉備津彦さま。覚悟は出来ておりますよ。あずみのこと、よろしくお願いしますね」
 死者の帷子を身につけ、島子は吉備津彦に微笑みかけていた。
 潔い死、島子はもともとこうなることを承知していたようで、誰も恨んでいない、と吉備津彦に告げていた。 
「すまない、島子。俺ひとりの力じゃ、おまえの一族、温羅のことをどうにもできなかった…」 
「いいんですよ。あなたのせいではありません。ぼくはここまで、23年でしたが、生きられただけで満足なんです」
「おまえを守るって…守ると約束したのに、何も出来なかったんだぞ、感謝するな。責めてくれよ。俺のことを恨んでくれ。そのほうが、おまえを失う苦しみが、減るではないか…」 
 
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