理想の恋愛関係
「それならいいが……」


兄はそう呟いた後、私の様子を伺う様にしながら言った。


「今日は茜の見舞いに行くのだろう？」


「そうだけど、何か伝える事有る？」


茜さんは母方の従姉で、兄とは同じ年だから、二人は昔は割りと仲が良かった。


なぜだかここ数年は交流が無くなってしまった様だけど。


その茜さんが、先日運転中の事故で入院したから今日は見舞いに行こうと思っていた。



「茜の事はいいが……」


兄は憂鬱そうに私を見た。


「中央病院には今、二ノ宮優斗の母親が入院している。あれだけ広ければ偶然会う可能性は少ないと思うが、気を付けるんだぞ」


「……」


兄の言葉に、私は激しく動揺した。


確かに、優斗君のお母さんは入院していると言ってたけど……あれから何日も過ぎている。


未だに退院出来ないと言う事は、余程重傷なのだろうか。


優斗君は精神的な病気だと言っていたけど。


それに……もし、優斗君がお母さんの見舞いに来ていて、偶然会ってしまったら……。


私は会いたいけど、優斗君はきっと嫌がるだろうし約束を破る事になってしまう。


「……緑？」


兄の呼びかけも耳に入らない程、私はあれこれと考えを巡らせた。
< 102 / 375 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop