理想の恋愛関係
考えてみれば、こんな風にコソコソする必要は無い。


私には茜さんの見舞いに行くという、大義名分が有るんだし、もし優斗君に会ってしまったとしても不可抗力だ。


約束を破って追いかけている訳じゃ無いんだし、堂々としていればいい。


そう思いながらも、私は周囲を気にしながら足早に受付を通り茜さんの病室に向かっていた。


偶然優斗君に会えたら嬉しいのに、反面優斗君の失望した顔を見たくなくて会うのが怖い。


この感情は、自分でももう訳が分からない。


憂鬱な気持ちになりながら、事前に聞いていた病室を探し一応ノックをしてから扉を開けた。




「緑ちゃん来てくれたのね、ありがとう」


ベッドに上半身を起こして雑誌を読んでいた茜さんは、私を見るなり嬉しそうな顔をした。


この年になって、緑ちゃんと呼ばれるのは少し照れる。


そんな事を考えながら、私はベッド脇まで行き、手にしていた花篭を台の上に置きながら言った。
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