理想の恋愛関係
通りを走っていたタクシーに飛び乗り、そのまま家に帰った。


本当は打ち合わせの後買い物をしようと思っていたけど、もうそんな気持ちは無くなっていた。


今まで、優斗君には何度も振られて来たけど、今日見た光景は今までで一番ショックだった。


優斗君が大切に想っている彼女を現実に見てしまった事もかなりのショックだったけど、一番は優斗君の笑顔。


ずっと優斗君の事が心配で、少しでも元気になって欲しいと思ってた。


どうすればいいんだろうと考えていたけれど、答えは簡単だった。


優斗君は彼女と居られれば、それだけで幸せなんだ。


複雑な家庭環境で悩みも多いだろうけど、彼女が居れば癒やされるのだろう。


彼女とは駄目になったと言っていたけれど、レストランで見た様子では、寄りが戻ったみたいだった。


きっと優斗君は幸せになる。


もう、暗い顔はしなくなる。


「……」


携帯電話を取り出して、優斗君のアドレスを呼び出した。


一瞬、躊躇いながらも削除する。


寂しいけど、仕方なかった。


私が優斗君の周りをウロウロしてたら邪魔だろうし、それに優斗君から連絡が来る事は二度と無いとよく分かったから。


私が優斗君の為に出来る事は、もうしつこくしない事、邪魔をしない事だけだと思う。


優斗君のアドレスが消えた携帯をじっと見つめていると、涙が溢れて来た。


辛くて、哀しくて仕方ない。


失恋して大泣きするなんて初めてだった。


自分がこんなに弱いとは思ってなかった。


ベッドに顔を埋めて、気が済むまで泣き続けた。
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