理想の恋愛関係
「緑さん?」

「あっ……ええと、優斗君どこでりゅ……神原さんと会ったの?」


動揺を顔に出さないように務めて言う。


優斗君はあっさり答えてくれた。


「偶然、仕事で一緒になったんだ。彼は取引先の担当者だから」

「えっ? でも優斗君は事業部長でしょ? 彼と話す事なんて有るの?」


竜也は確か主任だったはず。


二人の役職には開きが有るし、頻繁に連絡取り合う事は無いはずだ。


以前竜也自身がそんな事を言っていた。


不安になりながら優斗君の返事を待っていると、優斗君は少し引いた様子で言った。


「緑さん……何で俺の役職知ってるんですか?」


「え……あ、兄に聞いたのよ」


咄嗟にそう誤魔化してしまった。


龍也から聞いたなんて言って、過去の関係を優斗君に知られたくない。


まあ、龍也が話してしまったら終わりなんだから自分から話した方がいいのかもしれないけど、恋人でも無い私が、「昔の彼で、今では何の関係も無いの」なんて言ったって、優斗君も困るだろう。


「神原さんとは最近は疎遠になっているの。だから優斗君も何か言われても気にしないでね」

「え……ああ、そうなんだ」


優斗君はあまり納得していない様子だったけれど、深く追求しては来なかった。


当然なんだろうけど、私と龍也の関係が気になるといった気配は微塵も無い。


それはそれで少し残念に思っていると、優斗君は少しだけ暗い顔をして言って来た。
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