理想の恋愛関係
「俺がこうやって緑さんと会っている事を知ったら、栖川さんは気を悪くするでしょうね」

「え……まあ確かに……」


兄は未だに優斗君を許してはいない。


でもそれは、体面を潰された事で怒っているより、私を傷付けたと思って怒っているのが大きいのだと思う。


だから、ちゃんと事情を説明すれば兄だって分かってくれるはず。


もし頑固に反対して来ても、私は優斗君と会うのを止めるつもりはない。


「気にしなくて平気よ。兄の気もその内変わるわ」

「……随分、気楽に言うんですね」

「だって……兄に何か言われても私の気持ちは変わらないもの」


「……それで栖川さんが怒ったらどうする気なんですか? 家を追い出されでもしたら……」


優斗君は心配そうに言う。

少し大袈裟なくらいに。


こういう悪い方に考えるところは、以前里桜さんが少し話してくれた複雑な家庭環境のせいなのだろうか。


「……そんな事で追い出されないし、もしそうなってもマンションでも借りて一人暮らしするわ。
子供じゃないんだし、実家を出たってどうにでもなるでしょ? 私がそれくらいでメソメソ泣く様に見える?」


優斗君の気が少しでも楽になるといいと思いながら、私はいつも以上に明るい声で言った。


「いや……確かに見えないな。緑さんが泣くところは想像出来ない」


優斗君は小さく笑いながらそう言った。


その台詞に若干の不満は有ったけれど、優斗君の顔が明るくなったので、良かったと思った。
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