理想の恋愛関係
「優斗君、 ごめんね。待たせちゃった?!」


優斗君はのんびりとした動作で顔を上げた。


「あっ、緑さん。俺もついさっき来たところだから」


機嫌よく言われてホッとした。



「それなら良かった……じゃあ早速買い物に……そう言えば今日は何を買いに行くの?」


昨日から気になっていた事を聞くと、優斗君は少し困った顔をしながら言った。


「明後日ホワイトデーだろ? 会社の子に何か買って渡さないといけないんだ」

「……え?」


ホ、ホワイトデー?


そう言われれば確かにそうだけど。


まさか買い物が、女性へのプレゼントだったなんて。


しかも、ホワイトデーに何かを贈ると言う事は、バレンタインデーに何かを貰っているという事。

いろいろと想像して考えると、一気に気分は下降して行った。


「緑さん、どうかした?」


突然大人しくなった私を不審に思ったのか、優斗君が聞いて来た。


「いえ、なんでも……ホワイデーのお返しならそこのデパートでいろいろ見れそうね……ところで何人位に買うの?」


探りを入れる様になってしまったけれど、優斗君は疑う様子も無く答えてくれた。


「10人かな……いや、11だったかな。まあ大目に買って余ったら里桜にあげればいいから11でいいな」


優斗君は少し考えてから、後半は独り言の様に言った。


……10人。


もしかしたら更に一人増える。


優斗君に11人もの女性がチョコレートをあげていたなんて。


優斗君は仕事と家の事で大変だって事ばかり頭にあって、迂闊にも会社の女の子の存在を考えていなかった。


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