理想の恋愛関係
「優斗君はどうしようもない人間じゃないわ。そんな言い方しないで」


少しでも元気になって欲しくてそう言うと、優斗君は驚いた顔をした。


「緑さん……」

「事情は分からないけど……優斗君はいい加減では無いわ。だっていい加減でずるい人なら私と婚約していたはずだもの。
誠実で有ろうとしたから、苦労する道を選んだんでしょう?」


誠実で有ろうとした相手が、他の女性ってところは悲しいけど。


でも、優斗君がいい加減な人じゃないと私が思ってる事は伝えたかった。

「緑さん……あの時は本当に酷い事をしたと思う。謝って済む事じゃないけど……ごめん」

「え……」


優斗君が急に頭を下げて言った。


私は驚いてしまい、なかなか言葉が出て来ない。


責めるつもりなんか無かったのに、こんな展開になるなんて。


しかも、優斗君が今までと違って本気で謝罪しているのが感じられて……逆に困ってしまう。


「……あの、その事ならもう大丈夫だから。私の中で消化済みの事だし、今更文句言うつもりは無いわ。私はただ、優斗君がいい加減じゃないって事を言いたかっただけだから」


そう言うと、優斗君は気まずそうな顔をしながら頷いた。


「そうか……でも一度ちゃんと謝りたかったんだ」

「……」


優斗君は最近どこか自信が無さそうに見える。


出会った頃より、弱気になったと言うか……力が無くなってしまったような。


会社や家庭の事で、悩み過ぎたのだろうか。


早く元気になって欲しい。


優斗君とやっとこうして仲良くなれて、本当に嬉しくて、もっと近付きたいって欲も有るけれど、しばらくはこのままの関係でいようと思った。


今は余計な事で悩ませたくない。


優斗君が元気になったら、また私も頑張ろうと決めた。



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