理想の恋愛関係
ホワイトデーのお返しは、女子社員達に好評だった。


喜ぶ姿を見て、緑に相談して良かったと思った。


丁度、その日の夜は部内の歓迎会が有った。


お返しの効果か、いつになく女子社員が優斗の周囲に集まり、盛んに話しかけて来る。


「二ノ宮部長は、独身ですよね?」


いきなりのプライベートな質問に、優斗は戸惑いながら発言をした女性を見た。


部署の女性で一番年上……確か40才近い女性社員は既に酔っ払っているのか赤い顔をして優斗を見ていた。


「……独身ですが」


役職は自分が上だけれど、年齢は下だしベテランで仕事も出来る彼女の機嫌を損ねると仕事がやり辛くなる。


内心煩わしく思いながらも、聞かれた事に正直に答えると女性社員達は更に突っ込んだ質問をして来た。


「じゃあ、フィアンセはいますか?」

「……いませんよ」


「じゃあ、彼女は?」


続く質問にウンザリしながら、優斗はその場をやり過ごした。


しばらくすると、飽きたのか女性社員達は違う席に移動した。


ホッとしながら、グラスに手を伸ばすと、

「部長、どうぞ」


細い声と共にビール瓶が遠慮がちに差し出されて来た。


目を向けると、そこには一人だけこの場に残った女子社員が居て、少し緊張した様子で優斗を見つめていた。


「あ、ありがとう」


グラスにビールを注いで貰いながら、優斗は女子社員を観察した。


仕事中、直接関わる事は少ないけれど、部内の庶務的な業務をしている派遣社員の女性だとは知っていた。


年齢は優斗と対して変わらないように見えた。


「部長、最近元気が無いですね。体調が良くないんですか?」

「いや……ええと、吉沢さんだっけ?」


なんとか名前を思い出しながら言うと、


「はい。吉沢留美です」

留美は、ニコリと笑いながら、優斗の隣の席に移って来た。
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