理想の恋愛関係
留美は小柄で華奢で、全てのパーツが小さく儚い印象の女性だった。


以前、誰より大切だと思い付き合っていた恋人に雰囲気がよく似ていると思った。


「部長、お返しありがとうございました。好きなお店のだったので嬉しいです」

「そう、それは良かった」

「でも、ちょっとすぐには食べ切れないので、ゆっくり頂きますね」

「……吉沢さんは小食なんだ」

「はい。昔からあまり食べられなくて、だから背が伸びなかったのかも」


留美は困ったように眉を下げた。


「女の子は小さくてもいいんじゃないか? 気にする事ないよ」


優斗がそう言うと、留美は嬉しそうに微笑んだ。


「部長はどんな女性が好みなんですか?」

「えっ?」


優斗が驚いた顔をすると、留美は慌てて頭を下げた。


「あっ、すみません。変な事聞いて……少し飲み過ぎたみたいです。それに部長は同年代だからつい……」

「……あまり飲み過ぎない方がいい、気を付けるんだよ」

「はい」


優斗の言葉に、留美は素直に頷いた。


それからも留美は移動する事なく隣に居て、何かと優斗の世話を焼いて来た。


「吉沢さんもみんなとの所に行っていいんだよ」


留美は一番立場が下だから、自分の相手役を押し付けられたのかと思い言った。


けれど、留美は首を振りながら悲しそうな表情で優斗を見た。


「ここに居たいんです。駄目ですか?」

「いや……吉沢さんがいいなら構わないよ」


優斗がそう答えると、留美は小さな顔を綻ばせた。


結局、歓迎会が終わる迄、留美は優斗の隣を動かなかった。
< 158 / 375 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop