理想の恋愛関係
しばらくしても、緑の事が頭から離れなかった。


緑が見合いをしても不思議は無い。


自分と破談になってから大分時間が経っているし、そもそも正式な婚約はしていなかったのだからなんの問題も無い。


それなのに、不快感が拭えなかった。


あんなにおしゃべりな緑が、自分には何も言わなかった事が気に障った。


毎日メールをして来るくせに、そんな大事な事も言わないなんて。


不満な気持ちが顔に出たのか、正面でコーヒーを飲んでいた宮田が怪訝な顔をして言った。


「どうしたんですか?」

「あ、いや……何でもない」


慌てて平静さを取り戻し、まだ口を付けていなかったコーヒーに手を伸ばした。


「さっきの着物の女性、美人でしたね」


宮田は優斗の心情など気付く訳もなく、呑気な口調で言った。


「別に……普通だろ?」


思ったより冷たい声が出てしまったけれど、宮田が気にする様子は無かった。


「いや美人でしたよ。
でも部長は好みじゃないかもしれないですね」

「……は?」


意味が分からない優斗に、宮田はニヤリと笑いながら言った。
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