理想の恋愛関係
「俺達、友人関係になったんじゃなかったっけ?」
人気の無い柱の影で、優斗がそう言うと、緑は不服そうな顔をした。
「今は友人だけど、友人止まりで満足とは言ってないわ」
「最近そんな事言って無かっただろ?」
「優斗君が大変そうに見えたから、黙ってただけ。
しつこくしたら悪いと思って」
内心今更の気遣いだと思いながら、優斗は言った。
「とにかく今後は場所を考えてくれ。俺は注目の的にはなりたくないし、変なトラブルに巻き込まれたくない」
「……ごめんなさい」
「早く戻った方がいい。栖川さんが探しに来るかもしれないだろ?」
「分かった」
緑は落ち込んだ様子で、立ち去ろうとした。
けれど途中で立ち止まると、優斗を振り返った。
「何?」
「優斗君、私、優斗君が好きだからね」
「……」
緑は優斗の返事を待たずに、早足で去って行った。
年上とは思えない子供っぽい態度。
でも、呆れもしなかったし、面倒には思わなかった。
さっきまでよりなぜか軽い気持ちになりながら、優子の入院している病院に向かった。