理想の恋愛関係
――相手は誠実な人柄で仕事も出来る。


そうかもしれないけど……人は見かけじゃないかもしれないけど。


でも、正直言ってこれはキツい。


見ているとこっちまで暑く、息苦しくなりそうだった。


かと言って、そんな失礼な事を思っていると悟られる訳にはいかないから、私は必死に作り笑いを浮かべて会話をこなした。



「緑さんの趣味は何ですか?」


心の中で兄を罵倒しながら、見合い相手である袋小路さんの質問に答える。


「音楽鑑賞です」

「そうなんですか、僕は食べ歩きなんですよ。
美味しい店を自分の足で探すのは楽しいですよ」


納得の趣味だと思った。

勿論、そんな事は言わずに曖昧に微笑む。


「緑さんは料理はするんですか?」

「いえ、苦手なんです。料理は殆どした事が有りません」


期待するような目をした袋小路さんに、はっきりと言った。


あからさまに失望した様子に、ホッとする。


その後も会話は弾まないまま、見合いは何とか終了した。
< 168 / 375 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop