理想の恋愛関係

「本当に気が変わる事はないのか？」

「ない」


兄の問いかけに私は瞬時に答えた。


それもかなり不機嫌な冷たい声で。


私の怒りをあえて伝えたかった。



あれほどちゃんと断るように言っていたのに、兄は先方への返事をしていなかった。


「いつからそんないい加減になったの？」


イライラしながら言うと、兄は決まりが悪そうな顔をして言った。


「断るつもりだったが、先に相手から結婚を前提に付き合いたいと連絡が入ったんだ。
立場的に断り辛くなった、分かるだろ？」


分かるけど、許せない。


「とりあえず、もう一度会ってくれないか？　一度二人で出かけてみれば意外に気が合うかもしれないだろ？」

「気が会うとかそれ以前の問題なんだけど」

「何が不満なんだ？」


わざとらしく首を傾げる兄に、私は忍耐の限界を感じながら叫んだ。


「じゃあ、はっきり言うけど私太ってる人は無理なの！」

「お、お前……人間は外見じゃないぞ？」


兄は私の勢いに押されたたように言う。


「そんなの分かってるけど、好みってもんが有るでしょ？　とにかく袋小路さんは絶対に有り得ない。だいたい最初から断るって約束だったはず」

「そうだが……」


歯切れの悪い兄に、私は勢いのまま以前からの疑問を投げかけた。


「ねえ、どうして私の見合い話を進めたいの？　２７で独身なんていくらでもいるでしょ？　というか私の周りだと独身が殆どだけど……もしかして何か企みが有るんじゃないの？」


そう言うと兄はあからさまに動揺を見せた。


適当に言ってみたけど当たっていた……。


私は呆れながら兄を睨んだ。


「理由を言って。何で私を結婚させたいの？」

「そ、それは……」


兄はかなり渋った様子を見せながら、それでも観念して言った。