理想の恋愛関係
優斗の母
「優斗君、私、家を出たの」


久しぶりに会った優斗君にそう告げると、優斗君は驚き食事の手を止めた。


「え? どうして?」


「兄が結婚する事になったの。小姑が居たら奥さんが気を遣うでしょ? 私も一人暮らしに興味有ったからちょうど良かったわ」

「そう……引っ越しはもう済んだのか?」

「ええ、新しいマンションはね、優斗君の家と方向は一緒なの。
駅は4つ離れてるんだけどね」


これからは、食事の後一緒に帰る事が出来る。
同じ沿線っていうのはかなり重要だった。


優斗君は私の思惑に気付く事は無く、心配そうな顔をして言った。


「一人暮らしは大変じゃないか?」

「全然、家事は得意だし何も困らないわ」


さり気なく、家庭的だと、良い奥さんになれるとアピールしてるんだけど伝わっているのだろうか。


「緑さんは凄いな。仕事も順調で自立していて……一人で生きていける強さが有る」


……全く伝わっていない。


一人でなんて生きていきたくない。


「そんな事無いわ。私、これでも寂しがりやで……」

「俺は生まれ育った家を出る時、不安だったよ。緑さんみたいに笑えなかった、母さんはもっと苦しんでいたけど……」


優斗君は、寂しそうな顔をして言った。
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