理想の恋愛関係
優斗君の家の最寄り駅に着いたのは、約束の10分前だった。


結構道が混んでたから、焦ったけど間に合って良かった。


ホッとしながら、目についたパーキングに車を止める。


縦列ってあまり好きじゃないけど、時間も無いし、土地勘も無いから他を探している暇はなかった。


今日はキチンとした女性らしさをアピールしたいから、遅刻なんて許されない。


運良くスムーズに車を停められて気分良く荷物を取り出していると、背後から声をかけられた。


「緑さん」


直ぐに優斗君の声だと気付き、私は勢いよく振り返った。


「優斗君、どうしたの? 待ち合わせは駅よね?」

「ここは通り道なんだ。目についた車から緑さんが降りて来たから驚いた。電車だと思ってたからね」

「荷物が多かったから」


笑顔になりながら答える。


最近の優斗君は、待ち合わせ時間より早めに来てくれる。


今日も、ちゃんと来てくれた。


幸せを感じていると、優斗君が荷物を下ろすのを手伝ってくれながら言った。


「駐車するところ見てたんだけど、緑さんって運転上手いな」

「え……そう? あまり意識した事無かったけど」

「多分俺より上手いよ、女性は運転苦手なイメージが有ったけど……本当に緑さんは逞しいな、感心したよ」


た、逞しい?


感心して貰いたいって目標は早くも達成したけれど、予定と大分違うジャンルな気がする。


かなり微妙な気持ちになりながら、優斗君の家に向かった。
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