理想の恋愛関係
優斗君は最初は断って来たけれど、最終的には折れてくれた。


そういう訳で、今二人で近所のスーパーに買い出しに来ているのだけれど。


「何を買うんだ?」


カートを押しながら言う優斗君は素敵過ぎる。


それにこうやって買い物をしていると、新婚夫婦みたいで浮かれた気分になってしまう。


なかなか買い物に集中出来ないんだけど、完璧な料理を披露するにはこんな事じゃいけない。


気持ちを切り替えて、色鮮やかに並ぶ食材に目を向けた。


見た目がよくて、味もよくて、更に料理上手のイメージを植え付ける為にはどんなメニューがいいのだろう。


お母さんはあっさりしたものが食べたいと言っていたけれど、身体の病気って訳じゃないから、だいたい何でも食べられると思う。


……思いの他、悩んでしまう。


キョロキョロしていると、綺麗な赤身のお刺身が視界に入った。


……魚を丸ごと一匹買って、素早い動きでおろしたら格好いいかもしれない。


そうしたら優斗君も感心して、


―緑さん、凄い包丁さばきだな、見直したよ―


なんて感心してくれるかもしれない。


そんな事を考えてると、優斗君は、顔をしかめながら言った。


「なんだか、生臭いな」
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