理想の恋愛関係
不幸って……そりゃあ確かに複雑な環境で嫌な事や苦しい事はいろいろ有ったかもしれないけど。


でも……、


「あの……その言い方はおかしいと思います」


私にはお母さんが、ただ不幸なだけとは思えなかった。


「ご主人が亡くなって、住み慣れた家を離れて辛いのかもしれないけど、でもお母さんには優斗君がいるでしょう?」

「え……」


驚きの表情で私を見るお母さんに、私は止まらずにまくし立てた。


「大好きな人と結婚出来て、その人の子供を産むことが出来たのに……どうして不幸なんて言えるんですか? どうしてその幸せに気付かないんですか?
どんなに望んだって叶えられない人は沢山いるのに……お母さんは全て失った訳じゃない。
大好きな人との大切な子供が側に居るのに、それで不幸だなんて……少なくとも優斗君には絶対に言って欲しく有りません!」


バンっとテーブルを叩いてしまいそうな程、エキサイトした私は、言い終えてしばらくしてから呆然とした二人の視線に気付き現実に返った。

……終わった。


お母さんに気に入られ、家にお嫁に来なさいよって言って貰う作戦が……ガラガラと音を立てて崩れ去った。


しかも、自分の失態で。


どうして、あんな事を言ってしまったのだろう。


お母さんは病気なのに。

事情を全て知っている訳じゃない私が口出しする問題じゃ無かったのに。


でも……お母さんの事で悩んでいる優斗君の事を思ったら、口が勝手に開いてしまった。


それも異様に流暢にペラペラと。


驚愕した二人の表情を見ると居たたまれない気持ちになる。



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