理想の恋愛関係
「緑さんにお礼を言おうと思ったんだ」

「……えっ!? お礼? どうして?!」


まさかの言葉に、思わず変な声が出てしまった。


優斗君は気にする様子はなく続けた。


「お礼は、緑さんが母さんにはっきりとした意見を言ってくれた事。
言い辛い事だったはずなのに……感謝してる。
母さんも、緑さんに言われた事を考えてるみたいだ」

「……」

「考えてみれば、俺達の周りにあんなにはっきりと諭してくれる友人はいなかった。
緑さんの言葉に母さんもはハッとさせられたと思う。ありがとう」

「……あ、あの……そんな、気にしないで。私はただ……とにかく役に立てたなら嬉しいわ」


何だかよく分からないけど、優斗君は全く怒っていない。


しかもお礼まで……これって、災い転じて福なんとかってのかもしれない。


優しい優斗君の笑顔を見ていたら、失っていた力が蘇って来た。


「また遊びに来てくれると助かるよ」


優斗君の言葉に、私はこれ以上ないくらい舞い上がり頷いた。



それから何度か優斗君の家に遊びに行った。


お母さんがどう思っているか不安だったけれど、特に何か言われる事は無かった。


でも、あの時のように不幸だとか後ろ向きな事を言う事も無くて、穏やかな空気で過ごす事が出来ていた。


なんだか、本当に優斗君と近付いた気がする。


もしかしたら、このまま恋人同士になれるかもしれない。


そんな期待を持ってしまう程、優斗君は優しくてもう幸せ過ぎる毎日だった。
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