理想の恋愛関係
「何、焦ってるの？」


バタバタと机周りの片付けをする私に、鈴香が近付いて来て言った。


「優斗君と食事の約束をしてるんだけど、クライアントとの打ち合わせが長引いて……急がないと遅れるわ」


バッグに荷物を適当に詰め込むと、私は勢いよく立ち上がった。


「……少しくらい遅れても大丈夫でしょ？ 仕事だったんだし」

「駄目よ！ 時間も守れないだらしない女と思われたら嫌だもの。
仕事のスケジュール管理も出来ない女と思われたら嫌だもの」

「そんな事思わないでしょ？ 滅多に遅刻しないんだし」


呆れた声の鈴香に返事をする間も惜しみ、私は事務所を飛び出した。


時計を見ると、あと五分しかない。


足は結構早いから走れば間に合うけど……優斗君に大股で走る姿は見られたくない。


でも遅刻は有り得なくて……結果微妙な小走りとなり、風を切って待ち合わせ場所に向かった。




「……間に合った」


一分前に無事到着した。


辺りを見回してみたけれど、優斗君はまだ来ていない。


良かった待たせなくて。


最近の優斗君は五分前に来る事も有るから気を遣う。


素早く髪を整えながら、優斗君を待つ。


そうやって何気なく前方を向いていた視界に、なぜか突然球体が飛び込んで来て真っ直ぐ私に向かって進んで来た。
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