理想の恋愛関係
「緑さん、俺の事はいいから話し合って来るといいよ」


優斗君の声が聞こえて来て、私はハッと我に返った。


こんな状況でボンヤリしている場合じゃなかった!


「優斗君、誤解なの! 話し合う事なんか無いから」


直ぐにそう訴えたけれど、優斗君は既ににひいてしまっているようで、どこか冷めた目をしながら言った。


「いや、彼は話が有ると言ってるんだから、ちゃんと聞いた方がいい。
それに俺もあまり食事の気分じゃないし、また今度にしよう」

「えっ?! ち、ちょっと待って……優斗君?」


優斗君は私の呼びかけに振り返らずに、サッサと歩いて行ってしまった。


……呆然。


普通、ドラマとかだとこういうシーンの時、優斗君の立場の男性が間に入って、

―彼女に何の用ですか?!―

なんて女性を背中にかばって言ったりするのに。


かばうどころか、あっさりと置いていかれた……。


そりゃあ私は彼女じゃないけど……でもあまりにあっさりしているというか……。


やっぱり私って、優斗君の中でどうでもいい存在なんだ。


悲しみに沈んでいると、袋小路さんの空気を読まない声が聞こえて来た。


「栖川さん、何か食べたいもの有りますか?」


私は振り返り、鋭い目で袋小路さんを睨み付けた。


「あの、失礼じゃ有りませんか? 突然来て先約の邪魔をするなんて」


貴重なデートのチャンスをどうしてくれるんだと叫びたいのを、グッと堪えた。
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