理想の恋愛関係
浮かない気持ちのまま家に帰った。


母親はもう寝ているのか、家の中はシンとして寒々しかった。


水を飲もうとキッチンに行くと、簡単な料理をしたのか、シンクに鍋が一つ置いて有った。


緑に正面切って意見されてから、優子は簡単な料理をするようになった。


何を思っているかは分からないけれど、良い兆候なのかと思い希望を感じた。


仕事も慣れて来ているところだし、優子にも僅かだけれど回復の兆しが見える。


久しぶりに心に余裕が出て来ていたはずだったのに、緑のせいで台無しになった。


イライラとして仕方ない。


冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して一気に飲む。


冷たい水が喉を通って行くのを感じた。


だんだんと感情も静まって来る。


すると、徐々に客観性が戻って来た。


考えてみれば、緑が見合い相手と付き合おうがどうしようが自分には関係ない。


怒る方がおかしいし、そんな立場でもないのに。


イライラとするなんて、これじゃあ、まるで嫉妬しているみたいだ。


「……有り得ないよな」


頭に浮かんだ考えを直ぐに打ち消すと、優斗はシャワーを浴びる為バスルームに向かった。
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