理想の恋愛関係
「……え?」


数メートル先の建物の影に緑の姿を見つけて、優斗は顔を強ばらせた。


緑は明らかにこちらを見ていたようで、目が合うと慌てた様子で顔を背けた。


それでも立ち去る気配は無く、その場から動かない。


優斗は今度は隠す事ない大きな溜め息を吐くと、留美に向き合い早口で言った。


「吉澤さんごめん、俺はもう行くから。
個人的な事では役に立てないけど、仕事で困った事が有ったら遠慮なく言って」

「え……あの、二ノ宮部長?!」


身を翻し立ち去る優斗を留美が引き止めようとする。


それでも優斗は止まらずに、慌てた様子の緑の居る建物の方に早足で向かって行った。




優斗が近付いて来る事に気付くと、緑は更に慌て出し落ち着きがなくなった。


逃げ出す前に目の前まで行き、素っ気ない口調で言った。


「緑さん、こんなところで何をしてるんだ?」

「えっ?! あの、仕事で……」


緑は動揺しているのか、落ち着きなく視線を泳がす。


「仕事? こんな所で立ち止まってるのに?」

「あ、あの、それは……」

「なんか見られてる気がしたんだけど」


優斗がズバリと言うと、緑は言葉に詰まり項垂れた。
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