理想の恋愛関係
「あの……仕事なのは本当なの。
依頼を受けて、打ち合わせに来たの」


緑は少し先に有るビルに目を向けながら言う。


「打ち合わせが終わってビルから出たら、優斗君がそこの居酒屋に入って行くのが見えて……それで久しぶりだったから話せないかと思ってたら……」

「入って行くところって……一時間近く前だけど」


優斗が不審そうに言うと、緑は驚いた顔をした。


「えっ、そんなに経っていた? あの……いろいろ考えてたから、気付かなかった」

「……考え込み過ぎだろ?」


まさか、ずっとここで待っていたとは。


呆れながら呟くと、緑は気まずそうに言った。


「あの、決して見張ってた訳じゃなくて……優斗君が店から出て来たから声をかけようか悩んでたら、彼女が……」

「彼女?」

「以前レストランで会った、優斗君の部下の女性。
彼女が優斗君を追いかけて行ったから、目を離せなくて」


そう言えば、緑と留美は一度顔を合わせた事が有った。


でも大した会話を交わした訳ではない。



こんな遠目で、よく分かったものだと思う。
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