理想の恋愛関係
「……それは二ノ宮さんの考えも有る事ですから」

「さっきも言ったけど、優斗には積極的に押した方がいいよ」


え、これ以上押していいものなの?


眉をひそめる私に、高柳華子は相変わらずズバズバと言った。


「それから母親の事本当にいいの?かなり曲者だよ」

「問題有りません。そういった事情は全て含めて考えて付き合っていますから」


余計なお世話だと思いながら、やや冷たく言うと、高柳華子はニヤリとして私の背後に向かって言った。


「良かったね、優斗。心強い味方が出来て」


……え?


まさか……恐る恐る振り返ると、そこにはいつの間にか近付いて来ていた優斗君が立っていた。

優斗君は気まずそうな顔をしながら、私と高柳さんを見ていたけれど、直ぐに高柳華子に向けて頭を下げた。


「高柳さん、お久しぶりです」

「久しぶり。里桜のところで会って以来だね」

「はい」


里桜さんのところで?


そう言えば優斗君、里桜さんの出産のお祝いに行くと言っていた事があった。


その時、高柳華子にも会ったのだろうか。


そんな事を思いながらぼんやりと二人のやり取りを眺めていると、高柳華子が突然私の方に目を向けながら言った。


「優斗、また適当な事して彼女を泣かせたら許さないよ」


え……今さっきそういう事言うの止めてと言ったはずなのに。


優斗君を責める前に、自分も反省して欲しい。


そんな想いが顔に出たのか、高柳華子は苦笑いを浮かべながら優斗君に何か耳打ちすると、お付きの男性を引き連れて奥へと歩いて行った。


……本当に偉そう。


時代劇に出て来る殿様のようだと思った。


今後、高柳華子の事は殿と呼ぼう。


そんな事を考えていると、優斗君が近付いて来た。
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