理想の恋愛関係
私は、最後に優斗君に会った時の事を思い浮かべた。


頭に血が上って、あまり覚えて無いけれど確か……、


「そんな事、今更許されると思ってるの?! もう皆に言っちゃったのよ!」

とか、

「私と結婚しなかったら会社がどうなるか分かってるの?!」


なんて事を喚いたような覚えが有る。


「え……緑、それ最悪だよ」


鈴香は嫌そうに顔をしかめた。


「何でそんな可愛気が無い事言ったの? 好きだから別れたくないって素直に言えば良かったじゃない」


「……あの時は怒りが大きくて、怒る事しか出来なかったの」


傷つけられた自尊心を守る為に、優斗君を攻撃したのだと思う。


「それに別れ話されてるのに、好きだなんて言える訳無いでしょ?」


「そう? 私なら言うけどね。本当に手放したくない人ならプライドを捨てて引き止める」


「そんな事、私には出来ないから!」


なぜか、鈴香に対してまでイライラしてしまう。


完全に八つ当たりなのだけれど。


鈴香は呆れたような顔をした後、突き放すような口調で言った。


「出来ないのは本気で好きじゃなかったからじゃない? 良かったじゃない、本気になる前に本性が分かったんだから」

「そう……なのかな……」


いろいろと反論したい事は有った。

でもそれ以上話す気になれなくて、ワイングラスに手を伸ばした。
< 28 / 375 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop