理想の恋愛関係
それから、毎日は淡々と過ぎていった。


優斗君への複雑な想いは胸にくすぶっていたけれど、もう彼に会う気は無かったし、もちろん彼からの連絡も一切無かった。



そんなある日、思いがけない相手から連絡が入った。


――神原龍也。


優斗君と出会う前、短い期間付き合っていた男。


龍也とも嫌な別れ方をしたのだけれど、優斗君との事ですっかり忘れ去っていた。


今更、何の用だというのだろう。


「はい」


感情の籠もらない声で、電話に出ると、対照的に明るい龍也の声が聞こえて来た。


「久しぶり、元気だったか?」


電話越しの龍也の声に、私は思い切り顔をしかめた。


よく元気か? なんて聞けると思った。


自分の裏切りが原因で別れた事を、都合良く忘れたのだろうか。


「まあまあだけど、何か用?」


内心イライラしていたけれど、態度に出したら別れを引きずって意識していると思われるかもしれない。


素っ気無くなり過ぎない様に意識して言った。


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