理想の恋愛関係
「あ、あの優斗君……」


緊張しながら近付いて声をかける。


「もう大丈夫？」


優斗君はいつも通りの顔で、私の様子を確認する様にして言った。


なんだか……凄く冷静。


さっきのあの出来事はやっぱり私の妄想？


そんな風に思ってしまう程、興奮してるのは私だけで優斗君は本当にいつも通りだった。


「あの……ごめんなさい。取り乱してしまって」

「いや、驚いたけど……でも俺のせいだから」

「え？」

「場所も考えずに突然話すような事じゃ無かった」


……やっぱり夢でも妄想でも無かった。


現実なんだ。


どうしよう……落ち着かなくちゃいけないと分かってるのに、嬉しくて舞い上がってしまう。

だって私と優斗君は両思い。


つまりは恋人同士になったって事。


あの素敵なレストランに、優斗君の恋人として行けるなんて。


冷静さなんてどこかに行ってしまいそうだった。


そんな私とは対照的に、

「とりあえず移動しよう。どこかで食事もしたいだろ？」

優斗君は腕時計に目を遣りながら、物凄く落ち着いた声で言った。


「え？　移動ってレストランは？」


どういう事だろう。


首を傾げる私に、優斗君は苦笑いを浮かべながら答えてくれた。


「予約の時間を大分過ぎてしまったから今日は無理そうだ。さっき電話してみたけど席は空いてないって」

「……え？」


驚いて自分の腕時計を見ると、確かに待ち合わせ時間から1時間が経っていた。


私……どれだけ泣いていたのだろう。


自分では気付かなかったけど、優斗君は付き合うのかなり大変だっただろう。
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