理想の恋愛関係
「やっと会う気になってくれて嬉しいよ」


龍也はそう言いながら、やけに爽やかな笑顔を見せた。


笑うと真っ白な歯が見えて、そう言えば歯のメンテナンスには力を入れていたなと思い出す。


自分を良く見せる為の努力は、惜しまない人だった。


私はもう、龍也の外見なんかに惑わされないけど。


「あんなにしつこく電話貰ったら、何の話か気になるでしょう?」


二度と騙されたくないという思いから、必要以上に警戒してしまう。


でも、それを表に出さない様に気を使いながら、さらりと言った。


龍也は何の気負いも無い、自然な笑顔を見せた。


「特に話が有った訳じゃないんだ。ただ久しぶりに会いたくなった」


「会いたくなったって……」


思い出してみれば、龍也は昔の恋人と別れた後も友人関係を続けていた。


付き合っている当時、その事で何度か喧嘩になった事が有った。


私は別れた恋人と仲良く友達関係を続けるなんて出来ないから、龍也の考え方を受け入れられなかった。


そういった価値観の違いで溝が出来ていき、最終的には浮気されたのだけど。

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