理想の恋愛関係
「どうかした？」


優斗君の声が続いた後、通話口を押さえられているのか何も聞こえなくなった。


今の声……誰？


会社の女性なのは確かだけど、もしかして吉澤留美？


声だけじゃ判別出来ないけど、直感で吉澤留美のような気がした。


彼女はこんな時間まで優斗君の側に居るんだ……しかも電話中なのに割り込んで来て。


不快感が生まれ広がっていく。


落ち着かない気持ちで待っていると、ようやく優斗君の声が聞こえて来た。


「緑さん、待たせてごめん」

「あ、いいの。仕事中だって分かってるから」

「ごめん。そろそろ戻るよ」

「分かった」

「じゃあ、また今度」


優斗君はそう言って電話を切ろうとした。それを、思わず引き止めて聞いてしまった。


「待って、優斗君今の女性は吉澤留美さん？」

「そうだけど」


優斗君はあっさり認めた。


「じゃあ緑さん、そろそろ切るよ」

「あっ、あの優斗君、吉澤さんとは本当に何も無いのよね？」


言ってはいけないと分かっているのに、つい口にしてしまった。


そして言った瞬間後悔した。


こんな嫉妬心むき出しの発言をして、優斗君に呆れられてしまう！


「緑さん、疑ってるのか？」


予想通り、優斗君は少しムッとした声になった。


「あ、あの、そういう訳じゃ……優斗君を疑ってた訳じゃ……」


ああ、こんなはずじゃ無かったのに。


疑ってる訳じゃなくて、心配だっただけなのに。


「緑さん、本当に仕事してるだけだから。もう切るよ」

「えっ？ あの……」


優斗君は素っ気なく言って電話を切ってしまった。

「……」


信じられない。


さっきまでは、凄く良い雰囲気だったのに。


子供っぽい嫉妬をしたせいで。


あんな事、言わなければ良かった。


あまりのショックに、倒れてしまいそうだった。


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