理想の恋愛関係
待ちに待った電話なのに、取るのが怖かった。


優斗君がまだ怒っていたらどうしよう。


「……もしもし」


恐る恐る電話に出ると、優斗君の穏やかな声が聞こえて来た。


「緑さん、今話せるか?」


特に怒った様子も無い、普段通りの優斗君に心からホッとした。


同時にやっと話せる事の喜びが広がっていく。


「だ、大丈夫!」


張り切って答えると、優斗君が話し出した。


「仕事がようやく落ち着いたんだ」

「えっ、本当に?」

「ああ、なかなか連絡出来なくてごめん」

「そ、そんな、気にしないで」


優斗君に優しく言われると、悩んで鬱々としていた半月間の苦しみなんて吹き飛んでしまう。


少しでも気にしてくれていたんだと思うと、嬉しくて仕方なかった。


喜びに感無量になっていると、優斗君の声が聞こえて来た。


「今度の日曜日、会えないか?」

「えっ?!」

「予定が有るなら、来週でもいいけど」

「え……な、無い。 予定なんて全く無いから!」


来週まで待つなんて、冗談じゃない。


こっちは優斗君に会えない欲求不満でもう限界なのに。


「じゃあ今度の日曜に」

「分かったわ。また優斗君の家に遊びに行っていいの?」

「いや、たまには二人で出かけよう。いつも家で母さんも一緒じゃ緑さんもつまらないだろう?」


そんな事無いけど……私は優斗君と会えたら幸せだけど。


でも、優斗君の口から「二人で出かけよう」なんて台詞が出るなんて!


もうどこまでも舞い上がっていきそうな気分だった。


「日曜日、迎えに行くから」

「む、迎えに?」


まさかそんなサービスまでして頂けるとは。


もう、幸せ過ぎて怖いくらいだった。
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