理想の恋愛関係
爆発しそうになる私の前で、兄の後ろに控えていた茜さんが嗜めるような口調で言った。


「ねえ、今そんな事言わなくても……場所を考えてよ」

「茜は口を出すな」


せっかく気を遣ってくれた茜さんに、兄は偉そうに言った。


こんな今時珍しい頑固な兄のどこがいいのだろう。


そんな事を考えていると、

「栖川さん、今日は失礼しますが、後日正式に挨拶に伺います。
ここでは周りの迷惑になるので」

優斗君は淡々とした口調で言った。


相変わらず、私とは違って落ち着いた態度だった。


兄は納得はしていない様子だったけれど、周囲の視線に気付いたのか渋々と頷いた。


それから私に目を向けると、

「早く帰るんだぞ」


なんて余計な事を言って来た。


大きなお世話だと言おうとした私より早く、優斗君が頭を下げて言った。


「失礼します。緑さん行こう」

「え、ええ」


兄に言いたい事は山のように有ったけど、今、優斗君の側を離れる訳にはいかない。


兄に恨みの視線を送ってから、歩き出した優斗君の背中を追った。
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