理想の恋愛関係
優斗君の横に並ぶと直ぐに言った。


「優斗君、ごめんなさい。兄が酷い事を言って」


優斗君が気を悪くして、私との付き合いが嫌になったんじゃないかと思うと心配で仕方なかった。


「緑さんが謝る必要はないよ。栖川さんが怒るのも無理はない」


優斗君は、穏やかな表情で言う。


「時間に遅れるから行こう」


優斗君はそう言ったけれど、やっぱり私達の間に流れる空気は変昼間と変わっていた。




楽しみにしていたレストランだったけれど、私の気分は浮かなかった。


そして、それは優斗君も同じに見えた。


兄の事で何か言って来る事は無いけれど、笑顔は少ないし、食欲も無いようだった。


優斗君は今、何を考えているのだろう。


表情からは読み取れないけど……まさか本当に別れを考えてる?

そんな事無いって信じたいけど、さっきの優斗君の言葉が気にかかった。


『確かにこんな風に付き合うのは良く無かったですね』


優斗君は悪く無いのに兄が責め立てたせいで、何か考え込んでしまった。


どこか上の空にも見える優斗君に、私は耐えかねて話を切り出した。


「優斗君、あの……兄の言った事は本当に気にしないでね。兄には私からちゃんと話しておくから」


優斗君は少し困った顔をしながら言った。


「そういう訳にはいかないよ。栖川さんの言い分は分かるんだ。婚約直前まで行きながら一方的に断ったのは本当の事だし、信用されないのは無理もない。また同じ事が有ったらと心配なんだろう」

「そうだとしても、私はもう大人だし、自分の事は自分で決めるわ。もしもこの先傷付く事が有ったとしても自己責任だと思ってる。心配してくれてるのだとしても、強要はされたくないわ」

「……緑さんが自立してるのは知ってる。でも、栖川さんと仲違いするのは良くない」


優斗君の言葉は、まるで別れの言葉の様ように感じる。


不安でいっぱいになりながら、優斗君に訴えた。

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