理想の恋愛関係
「ちょっと、飲み過ぎじゃないの?」


早々にボトルを空にした私に、鈴香はたしなめるように言った。


「いいの。食べてるからそんなに酔わないし……本当は酔いたいんだけどね。酔わないとやってられない!」


私はそう言いながらワインをがぶりと飲み、目の前に有るローストビーフを豪快に口に放り込んだ。


最近のストレスで過食気味だけど、今の私には気にする余裕はない。


「そんなに荒れなくても。別れるって言われた訳じゃないんでしょ?」


呆れたように言う鈴香を、私はキッと睨み付けた。


「でも別れたも同然でしょ? もう一週間も音沙汰なしなんだから!」

「まだ一週間でしょ? それから私に八つ当たりしないでよ」

「……ごめん。でも、あまりに優斗君がドライだから辛くて……ドラマだと邪魔が入ったら逆に盛り上がって、駆け落ちしたりするじゃない? そんな気配微塵も無いし。涼しい顔して、しばらく会うのを止めようなんて……あんまりだと思わない?」


一気にそう訴えると、鈴香は顔をひきつらせながら言った。


「普通、駆け落ちはしないと思うけど。でも確かに二ノ宮優斗は冷めてるよね、しばらく会うの止めよう以外には何か言ってた?」

「別れるつもりは無いって」

「迎えに行くからとかは?」

「……全く。言う気配すら無かった」


どんなに記憶を再生しても、、そんな素敵な言葉は一切無かった。
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