理想の恋愛関係
し、信じられない。


待ちに待った優斗君からの電話なのに、出られなかったなんて。


仕事中だったとはいえ、何て間の悪い。


大急ぎで静かな場所を探してかけ直す。


緊張しながら数回の呼び出し音を聞いていると、

「はい」


本当に久しぶりの優斗君の声が聞こえて来た。


「ゆ、優斗君……」


あまりの感動に早々に泣きそうになる。


「緑さん久しぶり。 今話せる?」


優斗君は、何事も無かった様に物凄く自然に話し出した。


あ、相変わらずドライな……。


そして相変わらずの温度差。


それでもめげずに明るい声で答えた。

「大丈夫。優斗君本当に久しぶり、元気だった?」

「ああ。仕事は忙しいけどね」

「そう……あの、身体の調子は?」

「普通だよ。それより……」


先日のお母さんの電話を思い出して聞いてみたけれど、優斗君にはサラッと流されてしまった。


「急なんだけど、明日会えないか?」

「えっ? あ、明日……会える……もちろん大丈夫!」


何が有ろうが断る訳が無い。

必死になって答える。


それにしても、まさかこんなにすぐに会えるとは思わなかった。


明日、優斗君と……。


もう頭は明日の再会のシミュレーションで忙しかった。


「明日、8時にこの前のホテルで」


優斗君は落ち着いた口調で続ける。


でも……またあのホテル?


あそこは良い思い出も悪い思い出も有るから複雑な気持ちになる。


今度は良い事しか起きないといいけれど。


それから優斗君と短い会話を交わして電話を切った。





明日、優斗君と会う。


そう考えると、緊張と期待と不安で、今日はとても眠れそうもなかった。
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