理想の恋愛関係
伝えようと思ったけれど……8時を15分過ぎても優斗君は現れない。


この前までは約束の時間より少し早く来てくれていたのに。


何だか急に不安になった。


優斗君の行動の変化に嫌な予感が湧いて来る。もしかして……今日の再会は前向きな話じゃないのかもしれない。


離れている間に、優斗君の気持ちは変わってしまった?


居ても立ってもいられない気持ちになる。


どうしよう……別れを告げられたら……それ以前に来てくれなかったら。


どんどん悪い方に考えが向かって行く。


息苦しさすら感じ始めた頃、

「緑さん!」

優斗君の声が聞こえ、早足で近付いて来る姿が視界に入った。


優斗君は清潔感の有る紺のスーツ姿だった。


スッキリとしたスタイル。


少し色素の薄いサラサラとした髪。


優しそうな目。


いつも以上に素敵に見える優斗君に、私の感情は一気に高まった。


「優斗君!」


ゴチャゴチャと考えていた不安を忘れ、声を上げながら駆け寄り抱きつく……はずが、

「緑」

ふてぶてしい声で呼びかけられ、私はピタッと足を止めた。


こ、この声は……。


「お前、年を考えろ。 こんな所で走り回るな」


走り回ってなんていないし、
年は余計なお世話だと思う。

それよりも、問題はなんでここに兄が?


優斗君との感動の再会のはずなのに。


まさか、また邪魔に来たというの?
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