理想の恋愛関係
「私と婚約解消してから大変みたいね。家も失って、会社も乗っ取られたんでしょ?」


言った途端に後悔した。


なんて嫌な女なんだろう。


しかもこれじゃあ、振られた事をいつまでも根に持っていると自分で言っているようなものだ。


「……」


優斗君は何も答えずに、私を見返した来た。


ここで止めればいいのに、私の口は止まらず更に挑発的な言葉を口にした。


「後悔してる?」


優斗君は不快に思ったのか眉をひそめたけれど、すぐに迷いの無い様子ではっきりと言った。


「緑さんと、正式に婚約しなかった事については後悔していません」


その答えに、私は再び傷付いた。


「そうだったわね、優斗君は心に決めた人がいるから私と別れたんだものね……財産が無くなっても幸せに暮らしてるって訳ね」


自棄になりキツイ口調で言った。


優斗君は私の態度に苛立ったのか、深い溜息を吐いた。


「彼女とは別れました。今は母と二人で暮らしてるんです」

「別れたって……どういう事なの? その人と一緒になる為に私との結婚を止めたんじゃなかったの?」


私と兄がどれだけ責めても、それまでの立場を失っても、優斗君は気持ちを変えないで彼女を選んだ。


それ程大切な相手と、どうしてあっさりと別れる事が出来るのだろう。


信じられない思いでいると、優斗君は疲れた様な表情をして言った。


「……そうしたかったけど、彼女にはふられてしまったんです」


その言葉を聞いた瞬間、身体の内側から説明出来ない怒りが込み上げて来た。


これが優斗君に対してなのか、顔も知らない彼女へのものなのか、未だに優斗君の言動に揺らいでしまう自分へのものなのか分からない。
 

そんな感情を持て余し、優斗君にぶつけた。
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