理想の恋愛関係
「ふられて、それで諦めたわけ? 栖川家に大恥をかかせておいて、そんな簡単なものだったの?」


「俺が彼女にした事を思えば、無理に引き留める事なんて出来ませんでした」


そう言う優斗君の表情は、罪悪感が滲んでいた。


私への仕打ちは後悔していないのに、一時期でもお金の為に彼女を裏切ろうとした事は後悔しているんだと分かった。


その事実に辛い気持ちは、どんどん大きくなり執拗に絡む様な事を言ってしまう。


「……婚約破棄なんて大胆な事した割には弱気ね」


優斗君は私の態度にうんざりした様子だった。


「すみません、急いでるので、これで失礼します」


素っ気無く言い、立ち去ろうとする。


私はそれを慌てて引き止めて言った。


「いつもこの時間なの?」


「え?」


怪訝そうな優斗君に、はっきりと聞こえるように言った。


「仕事終わるのこの時間なの?」


「……決まってませんが、もっと遅くなる事もあります」


優斗君は警戒する様にそう答え、振り返らずに去って行った。
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