理想の恋愛関係
「……何やってるんですか?」
顔を上げると、優斗君が呆れたような顔をして見下ろしていた。
手には、さっきまで私が持っていたランチボックスが有る。
転んだはずみで放り投げてしまったようだった。
「ご、ごめんなさい。ちょっと足を捻ったみたいで……」
27歳にもなって道で派手に転んでしまうなんて……あまりの恥ずかしさで居たたまれなくなった。
こんな情け無い姿を見られてしまうなんて、もう何もかもが嫌になる。
泣きたい気持ちになっていると、優斗君の溜息が聞こえて来た。
明らかに面倒に思われてる。
でも足が痛くて、すぐに立てそうに無かった。
「……優斗君、先に帰って。私はちょっと休んでから帰るから」
なんとか笑顔を作りながら言うと、優斗君は少し考えるようにしてから呟いた。
「仕方ないな」
何気無い一言が突き刺さる。
うな垂れる私に、優斗君が言った。
「歩けないんでしょう? 駅まで背負って行くから乗ってください」
「え……」
「ほら早く」
「あっ……はい」
私は戸惑いながらも、優斗君の背中に身体を預けた。