理想の恋愛関係
私の事を、特別に心配してくれてる訳じゃないと分かってる。


これは人命救助のようなもので、相手が誰でも優斗君はこうやって背負っていたんだろう。


でも……それでも涙が出る位嬉しかった。


冷たい態度と言葉に気持ちが折れそうだったし、なんて冷酷な人だと思ったけど、やっぱり優斗君は本当は優しい人なんだと思う。


優斗君に背負われ駅に向かいながら、思った。


やっぱり諦める事なんて出来ないって。


どうか私に振り向いてください……心からそう願った。





優斗君は駅に着くと、空いていたベンチに私を下ろした。


「はい」


全く表情を変えずに、ランチボックスを渡して来る。


「あ、ありがとう……重かったでしょう?」

「そうですね」


はっきりと言われ、一瞬言葉に詰まったけれど、気持ちを立て直し話を続けた。


「迷惑かけてごめんなさい。でも、助けて貰えて嬉しかった」


心をこめて言うと、優斗君は少し驚いた様な顔をした。


でもすぐに無表情に戻ると、素っ気ない口調で言った。


「いえ……念の為、病院に行った方がいいですよ。かなり大胆に転んでたんで」

「……そうするわ」


優斗君の頭に、あのみっともない転倒シーンが残ってしまったのは間違いないようだった。


でも、今はそんな失態忘れるくらい気分が良かった。


優斗君が少しだけ見せてくれた優しさに、幸せな気持ちでいっぱいになっていたから。
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