理想の恋愛関係
「それで……そのまま電車に乗って別れたの?」


どこか呆れた様な鈴香の言葉を、私はすぐに否定した。


「ちゃんと、駅でタクシーに乗るまで見送ってくれたわ」

「ふーん……まあ、当然だよね?」

「そう? 急いでるのにわざわざ送ってくれるなんて優しいと思わない?」

「いや……あまり思わないけど……でも緑としては、昨日のデートに満足してるんだ?」

「まあね、予定とは違ったけど楽しかったし……特に最後が良かったわ。優斗君に背負って貰って、よく考えたらあんなに近くに寄ったの初めてだったし」


完全に密着していたんだと思うと、なんだか気恥ずかしくなった。


思い出すと、顔がにやけてしまう。


そんな私に、鈴香は冷めた目をして言った。


「なんか子供みたいな付き合いね。その割に爽やかさは感じなけど……ちょっと冷静になったら?」

「何よそれ? 確かに昨日のデートは子供っぽかったかもしれないけど、私は冷静よ」


鈴香の失礼な言い分に、私はムッとして答えた。


昨日だって、いろいろ悩んだ末、優斗君を諦めない事に決めたんだから。


「それなら、いいけど……で、この先はどうするつもりなの?」

「時間が無いから、とにかく会う約束を取り付けないとと思ってるの。今夜にでも電話してみるわ」


機嫌よく言うと、鈴香は頑張ってと素っ気なく言った。


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