理想の恋愛関係
「私をいいって言ってくれる人も居るんだと思うと、嬉しくなったの」


最近の報われない日々で、すっかり失っていた自信を取り戻せたような気がした。


「え、じゃあその彼と付き合うんだ? 二ノ宮優斗は諦めたの?」

「え?……まさか! すぐにちゃんと断ったから」


今度は私が驚いて言った。


「だって……嬉しくなったって言ってたじゃない」

「それは……優斗君に冷たくされてばかりで何かと落ち込んでたから。でも自信が出て来たわ、もう少し積極的に優斗君を誘ってみる気になったの。今度は何としても夜に会うわ」


笑顔で言うと、鈴香は複雑そうな顔をして言った。


「これ以上積極的にならなくても……そのサラリーマンの彼にしとけば良かったのに」

「……今夜、優斗君に電話するわ」


鈴香の言葉を無視してそう言い、夜に優斗君に連絡した。


理由を付けて断ろうとする優斗君に、なんとかお願いして約束を取り付けた。



約束当日、張り切ってお洒落をして待ち合わせ場所に向かった。


30分も早く着いてしまったけれど、待つ時間もそれなりに楽しい。

けれど……。


一時間経っても優斗君は姿を見せず、心配になって何度もかけた電話も一度も繋がる事は無かった。
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